研究概要 |
○はじめに:断層に応力が作用するとき,断層粘土には変形による電位変化(SIP, Shear-Induced Polarization)が生じるため,断層のすべりをモニタリングできる可能性がある.本研究では,これに着目し,断層粘土の変形と電位変化の関係を詳しく知るために,いくつかの変形実験を行った. ○試料:本研究で用いた試料は柳ヶ瀬断層の断層粘土である.JIS 1204に準拠して粒度分析を行い,500μmの標準網フルイを用いて粗粒分を取り除いた.試料を均一に調製し,7kgf/cm^2の圧力で3000分間の1次元圧密を行った. ○実験方法:SIPの垂直ひずみの影響を調べることおよびせん断ひずみとSIP強度を定量的に見積もるため,一軸圧縮試験機を用いて直方体試料の変形試験を行った.鉛直方向に変位速度0.4%/minで変位が3%になるまで荷重をかけ,底面の荷重をかけた側と反対側の端に配置した電極を基準として電位を計測した.同時に変位と荷重も計測した. ○結果及び考察:試料に偏荷重を加えた場合,試料は非排水であるためせん断変形となるが,圧縮領域と引っ張り領域では電位の発生が反対になった.圧縮領域では負,引張領域では正の電荷が発現する事が確認された.また,直方体試料の表面に多数の電極を配置した平面ひずみ試験では,試料表面のひずみ分布の変化をディジタルカメラによるインターバル撮影によって求めることができた.その結果,期待通り,試料の中心部を基準として,最大圧縮軸面で負,最小圧縮軸面で正の電位変化が得られ,ひずみ分布と発生電位の間に強い相関が見られた. ○まとめ:断層粘土の変形時に圧縮場では電位が負の方向に変化し,引張場では正の方向に変化することがわかった.今回の試験条件では,圧縮ひずみが3%の時に最大70mVの電位変化が生じた.塑性ひずみと発生電圧の間には正の強い相関があることが分かった.
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