研究の背景 本研究では、転写産物がRNAi活性をもつ遺伝子をマウスゲノムに導入し、特定の遺伝子発現を動物個体全体で抑制する新たな実験手法を開発している。RNAiでは2本鎖RNAが標的mRNAの分解を誘導し無発現変異と類似の効果が得られる上、大部分もしくは全ての遺伝子に適用できるなど、相同組換えに依存した既存の遺伝子ターゲティングと比較して多くの利点がある。RNAiでは、2本鎖RNA発現遺伝子の導入位置はほぼランダムであり、さらに半接合性アレルで機能するため非常に効果的である。以下に本研究の進捗状況を報告する。 研究成果 本研究を申請して以来、当研究チームは成功裏に研究を進め、新たな段階に入つている。現在ではピエゾ作動性マイクロマニピュレーションが日常的に行われ、遺伝子導入マウスの作成に用いられている。国立遺伝学研究所で分子生物学の経験を積んだ庄司志咲子Ph.D.が2003年10月から研究室に加わり、JSPSのポスドクとして非常に高い能力を発揮している。同氏は以前に経験のなかったピエゾ作動性マイクロインジェクションを既に会得し、マウス配偶子の操作やin vitro胚発生を日常的に行うに至っている。 庄司氏は、卵母細胞の分離培養にも成功しており、当研究室で作成したGFP発現マウスから卵母細胞を得てRNAi実験のコントロールに用いる予定である。まだ同氏は試験的に用いているeGFPの次のステップとして、実際の標的遺伝子を対象としたtg RNAiを可能にするベクターの設計及び構築を行っている。これらのことから初年度の目標は順調に達成される見込みである。 今後の展望 初年度に引き続き、コントロールを用いたtg RNAiコンストラクトの確認作業を進めた上で、目的の新たな遺伝子について解析を開始する予定である。これらの研究結果を基礎として、少なくとも論文の1つをインパクトの高い雑誌へ掲載したいと考えている。
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