研究概要 |
DNA複製装置の構造解析としてPCNA-RFC-DNA複合体について顕著な進展があった。三者複合体を安定に形成させる条件を決定し、その構造を電子顕微鏡で観察した単粒子解析から三次元モデルを構築してクランプローディングの分子機構モデルを提唱した(Nat.Struct.Mol.Biol.11,632-636,2004)。複製フォークの停止時の修復に関するタンパク質因子としてHef、Hjmの2種を特に詳細に解析した。Hefはヘリカーゼ活性とヌクレアーゼ活性を有し、両者が協調して効率の良い修復機構を実現していることを提唱した(J.Biol.Chem.279,53175-53185,2004)。Hefのヌクレアーゼドメインについては昨年すでに結晶構造解析を終了していたが(Structure 11,445-457,2003)、引き続いて、ヘリカーゼドメインについても構造解析に成功した(Structure13,143-153,2005)。それによって、Hefが如何にしてフォーク構造DNAを特異的に認識しているのか考察した。Hjmはヘリカーゼ活性を有し、その性質が大腸菌のRecQ(Gene&Dev.18,1886-1897,2004)と類似していることがわかり、この活性が複製フォークの正常な進行にとって重要であることが示唆された。これらのタンパク質が必要に応じてどのようにしてレプリソームを再編していくのかを解明したいと考えている。 さらに、昨年から継続している複製開始複合体解析については、開始タンパク質Cdc6/Orc1の変性→再生による高純度タンパク質調製法を確立し、その試料を用いて、性質解析を行った。このタンパク質が複製起点DNAに結合特異性を有することが確認できた。また電子顕微鏡やゲルろ過、グリセロール濃度勾配遠心法により、この蛋白質の多量体構造がATP依存的に変化することを発見した。
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