研究概要 |
1)ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の開発 超高熱菌由来のHDAC-like-proteinの三次構造をヒントにヒトHDAC阻害剤を分子デザインし、構造の末端部に2環性芳香族炭化水素基をもつユニークな構造のN-hydroxybenzamide誘導体K-24に強い癌細胞増殖抑制があるのを見出した。しかし本化合物は水溶性等物性に問題があったので、窒素原子を導入した3-キノリン型(K-120)、キナルジン酸基型(K-140)を合成した。これらがK-24と同レベルの癌細胞増殖抑制活性を保持したまま高い水溶性を示すことを認めた。両化合物と共に、一次Xenograft試験(HT-29ヒト結腸がん細胞)で評価基準をほぼ満たした6-アミノ-2-ナフチル型化合物(K-32)をP388担癌マウス実験に供し、K-120とK-32にそれぞれT/C(%)140,185の延命効果を認めた。本実験でK-32が高い延命効果を示すことを認めたが、第1級アミノ基をもつことから、その代謝安定性が懸念された。そこで、K-32と構造上ほぼ同じ位置に窒素をもつ6-キノリン型化合物(K-164)を合成し、そのHDAC阻害活性を測定したところ、高い阻害活性(IC_<50>14.3nM)を示したことから、今後の動物実験での効果が期待される。 2)Her2/neuタンパク結合型低分子阻害剤の創製 Her2/neu結合型24残基ペプチドを断片化した少残基ペプチドを系統的に合成し、SK-BR-3ヒト乳がん細胞と、controlとして、Her2/neu非発現型SW620ヒト結腸がん細胞の増殖抑制活性を評価したが、有効なペプチドを見出すことができなかった。一方、(-)-epigallocatechin、(-)-epigallocatechin gallateに比較的強いSK-BR-3増殖抑制効果を認めたので、ピロガロール基をもつ3環性化合物を中心に分子デザインを行った。その結果、数化合物に弱いながら(IC_<50>数+μM)抑制効果を認めた。更に、ジスルフィド系統化合物に、エストロゲン非感受性乳がん細胞株であるHBC4に対する選択的阻害活性を認めた。今後、両系統化合物の構造をヒントに分子デザインを推し進めていきたい。
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