研究課題/領域番号 |
15310154
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
上里 新一 関西大学, 工学部, 教授 (50111969)
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研究分担者 |
長岡 康夫 関西大学, 工学部, 助教授 (90243039)
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キーワード | ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤 / P388担癌マウス実験 / HCT116 / SK-BR-3 / p21 / WAF1 / 細胞周期停止 / Her2高発現型乳がん細胞 / 緑茶カテキン |
研究概要 |
1)ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の開発 6-アミノ-2-ナフチル型化合物K-32、並びに、その類縁体K-120をP388担癌マウス実験に供し、それぞれT/C(%)185、140の延命効果を認めた。そこで、p53欠損株型ヒト骨肉腫細胞MG63を用いて、これら化合物の抗腫瘍活性が、他のHDAC阻害剤と同様、CDK阻害タンパク質p21/WAF1によって誘起される細胞周期停止を含む機構で起こるかどうかについて検討した。これら化合物は、MG63細胞のp21/WAF1タンパク質の発現を用量依存的に増加させ、p21/WAF1遺伝子プロモーター活性を著しく上昇させた。また、MG63細胞の細胞周期をG2-M期で停止させることが分かった。化合物K-32、120は、水溶性、代謝安定性などになお問題を残していたので、これらのアミド基に代わりヒドロキシエチルアミノ基、ヒドロキサム酸基に代わり2-アミノアニリン基、を持つ化合物をデザインした。その結果、HCT116ヒト大腸がん細胞増殖抑制効果、HDAC阻害活性において、現在臨床試験中の経口性HDAC阻害剤MS-275に勝とも劣らないHDAC阻害剤K-183、196、197を創製することができた。現在、NCIで抗がん活性を評価中である。 2)Her2/neuタンパク結合型低分子阻害剤の創製 緑茶カテキン、(-)-epigallocatechin、(-)-epigallocatechin gallateに、比較的強いHer2/neu高発現型ヒト乳がん細胞株SK-BR-3の増殖抑制作用を認めた。そこで、両カテキンの、Her2とHer3のヘテロ2量体化、並びに、Her2蛋白リン酸化に対する影響を調べた。その結果、両カテキンとも、濃度依存的にヘテロ2量化およびHer2リン酸化を抑制することが分かった。一方、Her2タンパク質のC末端側に存在するシステインと-S-S-結合を形成して、SK-BR-3細胞の増殖を抑制する含硫化合物をデザインした。これらの化合物のうち、あるものはHer2/neu高発現型ヒト乳がん細胞株SK-BR-3の細胞増殖をIC_<50>数十μMで抑制したが、大腸がん細胞HCT116に対しても強い増殖抑制効果を示した。今後、この作用機構を明らかにしていきたい。
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