研究課題
1)ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の開発2-アミノアニリン基をもつHDAC阻害剤を種々合成し、臨床試験中のMS-275と同等の癌細胞増殖抑制活性をもつ化合物を幾種か得た。そこで、ヒト正常繊維芽細胞(CCD-1059SK)毒性試験を実施した。特記すべきことに、K-183のフェニル部位にフッ素原子を導入した型の化合物K-198において、K-183並の高い癌細胞増殖抑制効果と毒性の著しい低減が観察された。この毒性はSAHAやMS-275より低いものであった。この結果は、K-198中のフッ素原子が、毒性の減少に大きく寄与していることを示すものであるが、その毒性軽減機構の解明については、今後検討すべき課題である。1,3-ベンゾジオキソール基を有するK-197もSAHAと同等の毒性であった。K-197とK-198について、ヒト血漿中安定性試験も行った。その結果、両化合物は、SAHAを上回る安定性を示し、MS-275と同等の安定性を示した。筆者は、癌治療薬の有力な候補化合物となることが期待されるK-197とK-198を見出すことができた。今後、in vivo実験に移行し、その抗癌剤開発候補化合物としての可能性を見極めたい。2)Her2/neuタンパク質結合型低分子阻害剤の創製o-アミノチオフェノール誘導体K-154は、Her2高発現型乳癌細胞株SKBR3に対して強い増殖抑制活性を示した。また、ヒト正常繊維芽細胞CCD-1059SK毒性試験で、IC_<50>>200μMとなり、乳癌細胞選択的に増殖抑制活性を示すことも示唆された。本誘導体は、上皮細胞増殖因子Hrg存在下、p-Her2レベルの増減を調べたところ、発現量は経時的に減衰することがわかった。故に、本誘導体は、Her2、3或いは細胞内ドメインのチロシンキナーゼと特異的に結合し、強いSKBR3細胞増殖抑制活性を示したものと推定される。筆者は、K-154のSH基がHer2タンパク質のシステイン基と-S-S-結合を形成し、p-Her2のレベルを低下させ、SKBR3細胞の増殖を抑制したのであろうと推察している。今後、癌細胞増殖抑制機構の分子機構を更に明らかにするとともに、ハーセプチンに代わるHer2高発現型癌治療薬としての可能性を追求していきたい。
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