研究概要 |
1)ピストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の開発 P388白血病細胞担癌マウス試験で、T/C(%)185の延命効果を示す6-アミノ-2-ナフチル基型HDAC阻害剤K-32を見出した。本阻害剤は、p21/WAF1遺伝子プロモーター活性を上昇させることにより、p21/WAF1の発現を用量依存的に増加させ、また、細胞周期をG2-M期で停止させることにより、癌細胞の増殖を強く抑制することが分かった。一方、2-アミノアニリン基と3,4-ジフロオロベンジル基をもつK-198は、ヒト正常繊維芽細胞毒性試験で、現在臨床開発中のSAHAやMS-275より低い毒性を示した。1,3-ベンゾジオキソール基を有するK-197もSAHAと同等の毒性であった。両者は、ヒト血漿中安定性試験で、SAHAを上回る安定性を示し、MS-275と同等の安定性を示した。K-32、197、198は抗癌剤開発候補化合物に十分値すると考え、更に研究を推進していきたい。 1)Her2/neuタンパク結合型低分子阻害剤の創製 緑茶カテキン、(-)-epigallocatechin、(-)-epigallocatechin gallateに、比較的強いHer2/neu高発現型ヒト乳がん細胞株SK-BR-3の増殖抑制作用を認めた。両カテキンは、Her2とHer3のホモ、ヘテロ2量体化及びリン酸化を抑制することが分かった。一方、o-アミノチオフェノール誘導体K-154に、SKBR3株の増殖を強く抑制する効果があることを見出した。本化合物は、そのSH基とHer2タンパク質のシステイン基と-S-S-結合を形成して、p-Her2のレベルを低下させ、SKBR3細胞の増殖を抑制したのであろうと推察している。今後、Herceptinに代わる低分子型乳癌治療薬としての可能性を追求していきたい。
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