研究課題
基盤研究(B)
シクロオキシゲナーゼ(COX)はプロスタグランジン(PG)産生の律速酵素で、非ステロイド性抗炎症薬の標的分子として広く認められている。COXにはCOX-1とCOX-2の2種類のアイソザイムが存在する。COX-2の発現は様々な場面で種々の調節を受けることから、炎症以外の作用も明らかになってきた。それはCOX-2選択的阻害剤によっても副作用が生じることに対応している。そこで、新しい創薬の標的としてPG産生に関わる膜蛋白質群、核内受容体の構造を解明し、創薬開発の基盤情報取得を目指している。膜結合型PGE合成酵素(mPGES)、5-リポキシゲナーゼ活性化蛋白質(FLAP)については、大腸菌の発現系を用いて活性のあるたんぱく質の大量発現及び精製に成功したが、現在のところ、X線立体構造解析に適した結晶は得られていない。ただし、新しく開発されたlipidic cubic phase法によって構造解析に適した結晶が得られる可能性がある。一方、核内受容体PPARαは赤ワインに含まれるポリフェノール・レスベラトロールによって活性化し、脳保護効果があることを見出した。この核内受容体には上記で示したmPGES及びFLAPの阻害剤であるMK-886が結合し、アンタゴニストとして作用することが報告されている。一方で、レスベラトロールはCOX-2活性阻害、発現抑制効果を持つことを我々は以前に報告してきた。そこで、既に報告されているPPARαのリガンド結合ドメインの立体構造を元に、コンピューターシュミレーションを行った。その結果、種々のポリフェノール類のいくつかについても、レスベラトロールと同様のPPARアゴニスト活性を見出すとともに、これらの情報をもとにシュミレーションを行ったところ、レスベラトロールの4位の水酸基がPPAR活性化に必須である可能性を見出した。
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