研究課題
本年度は、研究会を開催し、個別の紛争事例について研究分担者が報告を行い相互に検討した。また、研究分担者および協力者が分担した紛争の事例研究を進めるため、東ティモール、マレーシアおよびインドネシア、イギリス、イスラエル/パレスチナ、エジプトにおいて調査を実施した。さらに、海外から研究者を招聘し、平成17年11月にヨーロッパのムスリム・コミュニティに関する国際ワークショップを開催し、2005年後半にフランスで起きた移民系の若者による大規模かつ長期的な暴動を、多文化主義政策をとってきたイギリスのムスリム社会の現状と比較しながら検討した。本研究では、米ソ冷戦終焉後に頻発する地域紛争とその暴力化のメカニズム、そして紛争後の平和構築と開発復興について、(1)非国家主体による内戦型の紛争、(2)国内紛争と国際紛争の重層性、(3)国際機関や市民団体など紛争当事者以外の非国家的アクターの関与、の3点に注目し、地域研究の視点から検討することを目的としてきた。最終年度である本年度は、3年間の成果の研究成果を踏まえた個々の紛争の事例について、紛争に対する国際的な関与だけでなく、紛争の「当事者」自体が多様な国内外の要素を凝縮して形成されることを明らかにし、紛争の内部から地域的紛争が国境を越えた政治関係や言説形成と密接に結びついている状況を明らかにした。これらの視点は、本研究の成果報告書において、ルワンダを例に旧宗主国との関連を重視して詳細に分析することによって「部族」というアクター自体に凝縮する国内外の力学を解明した武内論文、中央アジアを例に国内外の報道を付き合わせることにより「暴力」言説の生成過程に注目した帯谷論文、パレスティナ/イスラエル紛争を取り上げた臼杵論文、9.11がインドの文脈に移しかえられあらたな紛争を惹起する過程を分析した押川論文などとしてまとめられた。また最終年度にあたり、比較の視点による論点の整理にも取り組んだ。2005年11月に実施したヨーロッパ社会におけるムスリムに関する国際ワークショップでは、受け入れ国の条件、国際的なイスラームの動きなど多様な要素を考慮しつつ、イギリスとフランスにおける「他者」排斥のメカニズムの共通性と相違を明らかにした。また、市民団体や国際機関など非国家アクターについては、今年度はとくに紛争地における災害と国際的な復興支援活動に着目し、非国家アクターの存在を前提として地域的な力関係が再構成される過程について実証的な研究を深めるなどの成果を挙げた。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (17件) 図書 (3件)
地域研究 7・1
ページ: 91-106
ポスト・ユートピアの民族誌(田沼幸子(編)), 大阪大学21世紀COEプログラム「インターフェイスの人文学」
ページ: 223-241
宗教から考える公共性(稲垣久和他編)(東京大学出版会)
ページ: 209-228
国際政治 142
ページ: 113-126
中央ヨーロッパの可能性(大津留厚編)(昭和堂)
ページ: 173-201
ロシア研究 76
ページ: 15-27
文化人類学入門(山下晋司編)(弘文堂)
ページ: 220-232
海外事情 53・4
ページ: 2-21
ページ: 5-12
湾岸アラブと民主主義-イラク戦争後の眺望(日本国際問題研究所編)(日本評論者)
ページ: 1-17
地域研究論集 7・1
ページ: 47-68
学芸総合誌環【歴史・環境・文明】 21
ページ: 48-53
叢書 身体と文化 第3巻 表象としての身体(鷲田清一他編)(大修館書店)
ページ: 236-261
Dislocating Nation State (Abinales, P.N. et al. eds)(Kyoto Univ.Press)
ページ: 212-226
The Dialogue of Civilizations Between Japan and the Muslim World (El-Sayed Selim, ed)(Cairo Univ.)
ページ: 19-28
Displacement Risks in Africa : Refugees, Resettlers and Their Host Population. (Ohta, I., Yntiso D.Gebre eds)(Kyoto University Press)
ページ: 338-358