研究課題/領域番号 |
15320004
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
佐藤 直子 上智大学, 文学部, 助教授 (60296879)
菅野 カーリン 上智大学, 文学部, 教授 (20226418)
荻野 弘之 上智大学, 文学部, 教授 (20177158)
川村 信三 上智大学, 文学部, 助教授 (00317497)
長町 裕司 上智大学, 文学部, 助教授 (90296880)
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キーワード | 言葉 / 言語論 / 論理学 / 修辞学 / 文法学 / 人文主義 / スコラ学 / 宗教改革 |
研究概要 |
二年間の本研究の一年目にあたる平成十五年度には主として以下の研究を行い、研究成果を得た。I.中世における「言葉」の理解に関して:1.(a)スコラ神学においてアウグスティヌスによる「内的言葉」の精神形而上学的言葉理解がトマス・アクィナスとエックハルトにおいてその頂点に至り、後に退けられる。(b)13世紀スコラ学的言語哲学では、古代の三学の中の論理学が以前に支配的であった文法学から明確に区別され、言語が一貫して論理学の側面から考察される。その流れの中、言葉・知解・事物の対応関係を強調する「思弁文法学」が単語の論理的機能を分析する名辞論理学(オッカム派)によって乗り越えられるが、オッカム派の論理学はまた言語共同体における言語使用を重視するブリダヌス派によって背後に押される。2.論理学の影で、古代の三学のなかの修辞学は中世において三つの形で存続し人文主義思想の種になった。すなわち、説教術、正式的書簡作成法、作詩法であり、その伝統の中で既に12世紀頃からキケロの修辞学が研究されていた。II.14世紀初頭にキケロの書簡集などのラテン語、後にギリシア語修辞学文献の発見にともない、イタリア人文主義では論理的思考が言語行為の一契機として解釈され、論理学が修辞学へと還元され、結果、修辞学は言語理解全体の中心となり、言語が教養と実践約生活の要と認められた。こうして修辞学は教育学、道徳学、法・政治学において根本的位置を得、諸学問の基盤と見なされた。15世紀末以来の国語への重視によって、実際の言語使用とその文学的・政治的・宗教的諸可能性が再評価され、歴史と民族性に対する視野が開かれた。規範的普遍論理学が高度に専門的知識に留まっていたのに対し、修辞学的言語理解は宗教改革とイエズス会の教育法によって一般市民のうちに受け入れられるようになった。
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