研究課題/領域番号 |
15320005
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
寺田 俊郎 明治学院大学, 法学部, 助教授 (00339574)
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研究分担者 |
小野原 雅夫 福島大学, 教育学部, 助教授 (70261716)
大橋 容一郎 上智大学, 文学部, 教授 (10223926)
大越 愛子 近畿大学, 文芸学部, 教授 (60213831)
加藤 泰史 南山大学, 外国語学部, 教授 (90183780)
御子柴 善之 早稲田大学, 文学部, 専任講師 (20339625)
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キーワード | グローバル・エシックス / 国民国家 / 倫理 / 責任 / コスモポリタニズム / イマヌエル・カント / 人間性 / 市場の倫理 |
研究概要 |
グローバル・エシックスとは、社会的相互作用が国民国家の枠を超えて広がり影響力をもつ現代において、どのような社会制度をつくっていくべきか、その社会において各人はいかなる責任を担うべきかという問いに対する答え、およびその答えの批判的検討である。インターナショナルな倫理を構築することは今なお重要だが、国民国家が経済の単位としては小さすぎ文化的アイデンティティの単位としては大きすぎることが明らかになった現在、インターナショナルなレベルのみならずグローバルなレベルで、すなわちコスモポリタニズムの観点から、倫理を構想することが必要である。イマヌエル・カントの「世界市民」をめぐる議論が今なお一つの準拠枠でありうることは国際的な論争状況を見ても明らかであり、それを批判的に再検討することを通して普遍的倫理の可能性と限界を反省することはグローバル・エシックスの構想にとって有益である。その際一つの軸となるのは「人間性」という概念である。その他、具体的な論点として、物語論的歴史理解、<9.11>とその後の世界をどう見るか、国家暴力とジェンダー、グローバルな正義と倫理、対話の限界と可能性、南北問題について考察してきた。紙幅の都合上、ここでは南北問題について述べるにとどめる。南北格差は経済のグローバル化と政治のグローバル化とのギャップによっていっそう深刻になっている。諸地域の政治参加すなわち自律の保障なくしてグローバルな市場原理に頼ることは公正を欠くと言わざるをえず、そのような市場原理の適用の倫理性は、市場原理の倫理的身分とともに、さらに反省される必要がある。南北問題に新しい展開を与えるのが地球環境問題である。地球環境問題は、それを招来した先進国の責任を問い直すと同時に、持続可能な開発が各々の地域の自律を要請するという形で、南北問題に新しい視角を与えるのである。
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