研究概要 |
三好は計算概念を再検討するに当たって,計算が二つの意味で記述不可能であるという困難を明確にし,リフレクションと呼ばれる自己を書き換える計算から着想を得た形而上学的装置一式を導入して,それらを通じてこの困難を間接的に手懐けるというアプローチを見いだした.その記述と理解のためにHume-Bergson形式と呼ぶ記述形式を導入し,それらの形式と上記の困難とのつながりから,これらの困難を超えた明証的な理解があり得ることを間接的に示した.そしてこれらの考察を時間論に適用することで入不二の時間論における第4の形而上学との親和性を示した. 郡司は動的情報射を用いた動的・局所的意味論に関する研究を行った.そこでは異なる背景(意味論)を有するエージェント同士の、齟齬を含みながら破綻しないコミュニケーション過程をモデル化し、意識や経済の抽象的モデルを構築して、論理・非論理の分化が生じることを示した.そしてさらに観測由来ヘテラルキーの理論についての研究を行い,ゆらぎを持つ環境の中で頑健な挙動を示すシステムの一般的理論を展開した.そのような環境では状態と関数が分離されないため,ゆらぎは両者に変質をもたらし,その効果がうまく相殺されて,安定・不安定な挙動の間を行き来する間欠的頑健性が得られた. 檜垣は西田幾多郎の哲学において議論されている数理的な議論が現象としての計算という観点から見ると重要な意味を持つことを見出し,このことについて検討を重ねた.その際西田およびドゥルーズの生命論との関連に特に着目して議論を行った. 戸田山は今までフィールドらにより主に数学と物理学について議論されている認識論の自然化を現象としての計算に適用する場合の問題点について,普遍的な計算概念よりもむしろ個別の事例について検討を行うことにより探求を進めた.
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