研究概要 |
三好は現象在をはじめとする一連の概念装置を計算の二種類の記述不可能生と関連づける形で議論を展開してきたが,本年度はこれについての論文を出版するとともに、これを援用した時間論について議論を深めて発表を行った。また、この概念装置と物理学のいくつかの理論との親和性に着目し、この方向での考察を進めるための予備的な研究を行った。さらに本プロジェクトの計算の哲学について科学哲学会のワークショップで報告を行ったが、そこでもこの方向に関連して量子情報科学におけるいくつかの事例について報告した。 戸田山は、計算についての哲学的考察を行うに当たって、認識論の自然化と同時に実在論を擁護する立場を強く押し出す方向で研究を進め,その成果の一部を成書の形で出版した。 檜垣は昨年度はベルクソン,ドゥルーズについての研究に基づき,特に計算における生成的側面の現われを生命の観点から考察してきたが,本年度はさらに西田幾多郎の哲学がそこに重なり合うことについて考察を深め、その成果を成書の形で出版した。そこでは西田の哲学における数理的側面についても改めて光を当てている。 郡司は本年度も引き続き内包的現実世界と外延的可能世界の相互作用に数理的枠組みを用いて定式化することで理論と計算機実験の両方からアプローチし,ヘテラルキーとインフォモルフィズムに基づく結果を出版した。現在これらはオープンリミットというアイデアとして一般化されつつある。 研究協力者の塩谷賢は、「計算」とは単なる道具や精神的に簡単な作業ではなく、科学哲学、技術論、哲学的方法論を含む様々な問題に関する集約点の一つを示す我々にとって根源的な自然種であるという立場から、「計算」について得られた知見を「計算=操作性のレベルにおける接続子による操作性の延長」というスローガンのもとで考えることを提唱した。
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