研究課題/領域番号 |
15320021
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
美学・美術史
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
柘植 元一 東京芸術大学, 音楽学部, 教授 (10129299)
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研究分担者 |
塚原 康子 東京芸術大学, 音楽学部, 助教授 (60202181)
田中 多佳子 京都教育大学, 音楽科, 助教授 (70346112)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2004
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キーワード | アジア・オリエント / 近代化 / 音楽史 / 楽器 / 伝統音楽 |
研究概要 |
楽器改良は、音楽伝統の継承と変容を考察する上で重要な一側面である。本研究は、その楽器改良の実態を、日本・中国・南アジア(インド)・イランおよび中央アジア諸国を対象として比較検討した。以下は主要検討項目ごとの知見である。 1)工業化と楽器生産システム:現在のインドと中国では、専門家用と一般向けの量産品の二極化が進む。中国では1950年代後半から、国営工場での組織的改良と生産システムができたが、20世紀末から再び個人工房も現れた。インドでは予想外に職人の世襲制が希薄で、老舗の楽器店や工房は少ないこと、また海外のインド人宗教団体がハルモニヤムを大量に発注することが量産の一因であることもわかった。量産は工業化の進度と連動するが、日本の伝統楽器のように高度な品質が量産になじまない地域もある。 2)政治体制の変化にともなう音楽創作の方針の変遷と楽器改良の関連:(旧)社会主義圏では、著しい十二平均律化、低音域の拡張、音域の異なる同類改良楽器による民族楽器楽団の結成が共通する。これは旧ソ連のロシア民俗楽団を雛形とするが、ウズベキスタンや中国では、社会主義体制以前から新しい民族/国民音楽創作の動きがあり、体制変化をこえた連続性も見出された。インドや日本では、中央集権的な社会主義圏のように組織的には進んでいない。絶えず小さい改良は認められるとしても、伝統音楽自体の保守性もてつだって、改良の程度はかなり限定された。 3)楽器の素材や構造の変化:今回の調査地域の中では日本とインドの保守性が突出する。多くの地域がガットや絹弦を金属弦にかえたが、邦楽器は絹弦へのこだわりを捨てない。ただインドの演奏者は、演奏法や表現様式上で微細な改良を続けるため、これに適応するため楽器も小さな幅での変化はみられる。 4)音楽作品や楽器改良に洋楽が与えた影響:旧社会主義圏での影響はとりわけ大きい。改良楽器によるアンサンブルは定着し、あらたな伝統音楽の一支流とすらなっている。
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