研究課題
本年度は前年度から続く作業を継続すると同時に、研究の成果をある程度発表した一年であった。前年度から始めた作業であるデータベース化の作業のうち、カヴァリエーリが制作した古代彫刻の複製版画に関しては、ほぼ作業を終了した。ヒエロニムス・コックが出版した版画のデータベース化については、かなりの進捗があるものの、依然作業を継続中である。来年度も研究補助員とともに内容を充実させていく予定だ。データベース化の作業を別にすると、研究分担者各自が自ら設定したテーマに沿った研究を続行中である。特筆すべき業績としては、研究代表者である幸福輝は、これまでの2年間の研究を反映させながら、著書『ピーテル・ブリューゲル-ロマニズムとの共生』を上梓した。これは、当時支配的だったロマニズムの風潮と、それに対するネーデルラント土着の文化という二項対立の歴史の図式の中にブリューゲルを位置づけ直した研究であるが、ロマニズムを構成する主要な要素として古代彫刻の受容についても論じている。研究分担者のひとり渡辺晋輔は、近年著わされた重要なルネサンス版画史概説に関する書評において、版画史研究の中で複製版画がどのように位置づけられてきたかを論じ、その中で古代彫刻の複製版画についても触れた。また18世紀イタリアの風景画家であるズッカレッリの作品に関する論文では、ズッカレッリが古代彫刻版画集を人物モチィーフのソースとして使っていたことを明らかにし、彼が参照した版画集を特定することで彼による風景画の制作年を特定した。
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国立西洋美術館研究紀要 9
ページ: 6-15
西洋美術研究 11
ページ: 200-207