研究課題/領域番号 |
15320036
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 史郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00145765)
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研究分担者 |
木畑 洋一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10012501)
草光 俊雄 放送大学, 教養学部, 教授 (90225136)
丹治 愛 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90133686)
中尾 まさみ 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教授 (60207719)
橋本 尚江 北海道大学, 言語文化部, 教授 (00091009)
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キーワード | イングリッシュネス / ブリティッシュネス / 帝国主義 / 小英国主義 / コスモポリタニズム / 都市化 / 土地に還れ |
研究概要 |
本研究の最終年度になる本年度は以下のことを行なった。 (1)産業革命以後のイングリッシュネス概念の成立というテーマを、都市と田舎、ブリティッシュネスとイングリッシュネス、グローバリゼーション(コスモポリタニズム)とイングリッシュネスという分担のなかで論じ、論文のかたちにまとめる。そのために2度にわたって研究会を開催した。 (2)国外の学会や研究会で、これまでにまとめてきた成果を発表する。具体的には草光と浜井がイギリスで開かれる日英歴史家会議で成果を発表し、中尾がニュージーランドのオタゴ大学のクリス・プレンティスと、また、橋本がイギリスのローハンプトン大学上級講師サイモン・エドワードと意見交換を行なった。 以上をとおして全体として確認しえたことは、後期ヴィクトリア朝におけるイングリッシュネス概念というのは、産業革命とそれに起因する都市化の拡大という現象と、大英帝国の帝国主義的拡大とそれによる民族と文化の多様化という現象とが契機となって形成された反動的メンタリティであり、それぞれ都市化の反動としての田園への回帰(「土地へ還れ」)と、大英帝国の拡大の反動としての「小英国主義」という傾向を帯びつつ、文化的に構築された概念だったということである。そしてそれはまた、グレート・ブリテン・アンド・アイルランド王国成立以後、ヴィクトリア朝のなかで進んでいた国民国家的ナショナリズムの成立(「想像の共同体」という問題)と深く関わった政治的に構築された概念でもある。この問題を18世紀後半以降の政治的・経済的・社会的・文化的な多様な動向と関連させて研究することの必然性は、まさにそこにあったと言うべきだろう。
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