研究概要 |
当該年度は、三神、八木ともに、7月にチェコ共和国のカール大学(プラハ)で開催された国際アイルランド文学会(IASIL)で口頭発表を行った。三神の発表は、新劇と小劇場運動の2つの異なった流れの中で上演されたマーティン・マクドナーの作品とその受容のされ方を分析することによって、マクドナーの本質へと向かう二つの道筋を提示した。八木の発表は、アイルランドを舞台における<次元=スペース>という概念でとらえることによって、具体性と抽象性をともに帯びた<アイルランド>という概念が1990年以降に書かれた劇作家の作品を通して確立したプロセスを提示した。口頭発表の成果は、ともにCOEプログラムの一環である早稲田大学演劇研究センター紀要に発表した。 プラハの後は、ダブリンに移動し、アイルランド演劇研究の第一線で活躍する岡室美奈子、Christopher Murray, Noreen Doody, Joseph Long, Anthony Roche, Declan Kiberd, Cathy LeenyらUCD(University College Dublin)の共同研究者を講師に招き、セミナーを8月の2、4、8日の3日間にわたって実施した。アイルランド現代演劇の動向に関するレクチャーの後、活発な意見交換ができたことは非常に有意義であった。現在、このセミナーでの成果を中心に、'StagingIreland'というタイトルで出版する準備が進められている。(現在、海外の出版社と交渉中) 昨年度より引き続いておこなっているアーカイブ資料に関しては、レディング大学のべケットアーカイブより購入した文書のpdf化、ティリング・アーカイブのデジタル化はともに順調に進められ、特にマクギネス文書の<インタビュー編>、<マクギネス自身の論文編>のデジタル化が完了した。現在、インタビュー編を本として出版すべく、アーカイブズの所有者、フィリップ・ティリング氏とともに編集が進められている。
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