平成15年度科学研究費を配分されたことにより、奈良女子大学に電子活字版CD-ROM『文淵閣四庫全書』と中国語専用のパソコンを導入することができ、著しく研究環境が整備された。 今年度の研究会は、ほぼ週1回のペースで行い、年度末までに『四庫全書総目提要』(四庫提要)の別集九〜十八、すなわち南宋別集の部の解読を終えた。これで『四庫提要南宋五十家研究』出版にむけての第一次草稿はほぼ成ったといえる。今後はこれをもとに第二次草稿を作成する予定である。 版本調査は、国内では静嘉堂文庫(東京世田谷区)に2回、国立公文書館内閣文庫(東京千代田区)で4回行った。その結果、蔵書目録に明版とあるものが実は清の重刻本であることなども発見し、実物を閲覧することの重要性を再認識するに至った。海外調査では、中国の北京図書館と台湾の国立国家図書館とを予定していたが、前者はSARSの影響により渡航不能となり、断念せざるを得ず、海外調査は台湾の国立国家図書館のみに限らざるを得なかった。ただし、国立国家図書館では、旧北平図書館所蔵の貴重書・善本を多く閲覧することができ、またマイクロフィルムがあるものについては、その序跋の部分を複写することを得、現在、日本に蔵されている版本との校勘を行っているところである。 さらに、これ以外の研究活動として、早稲田大学で開催された宋代詩文研究会や、大阪大学で開催された「テクストの読解と伝承」の特別研究会にも参加した。国内外の宋代文学研究者との情報交換の中で、宋代文学に関する最新の研究状況を得ることができた。
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