研究課題/領域番号 |
15320051
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉田 和彦 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (90183699)
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研究分担者 |
大城 光正 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (40122379)
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キーワード | 象形文字ルウィ語 / リュキア語 / 楔形文字ルウィ語 / ヒッタイト語 / アナトリア語派 / 比較言語学 / アルファベット / 対応 |
研究概要 |
前年度に引き続き、象形文字ルウィ語の碑文を読みながら、動詞の諸形式を収集するという基本的作業を進めた。その結果、象形文字ルウィ語の動詞は、3人称単数語尾に含まれるtがrと交替するかどうかによって、2つのグループに分けることができる。そして、rと交替するtは有声閉鎖音/d/を表す(グループI)のに対して、決してrと交替しないtは無声閉鎖音/t/を表している(グループII)と考えられる。そこで、視点を広げて、アナトリア語脈に含まれるルウィ系の他の言語であるリュキア語と楔形文字ルウィ語に注目してみると、象形文字ルウィ語t〜rはリュキア語dと楔形文字ルウィ語-t-に対応し、象形文字ルウィ語tはリュキア語tと楔形文字ルウィ語-tt-に対応することが分かる。すなわち、グループIのrと交替するtが/d/を表し、グループIIのrと交替しないtが/t/を表すという推定に対して比較言語学的な立場から実質的な根拠が与えられるようになった。つまり、アルファベット(単音文字、音素文字)で書かれているリュキア語において、有声のdがグループIのt〜rに、無声のtがグループIIのtに対応している。また、楔形文字ルウィ語でも母音間のシングルの-t-とダブルの-tt-が、それぞれグループIのt〜rとグループIIのtに対応している。ヒッタイト語と同じく、楔形文字ルウィ語でも母音間のシングルの-t-とダブルの-tt-は、それぞれ短い(弱い)tと長い(強い)tを表しており、音韻的には有声のdと無声のtとに相関性がある。
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