研究課題/領域番号 |
15320082
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
渡辺 尚志 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (10192816)
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研究分担者 |
大塚 英二 愛知県立大学, 文学部, 教授 (40201975)
神谷 智 愛知大学, 文学部, 助教授 (20283377)
志村 洋 関西学院大学, 文学部, 教授 (90272434)
山崎 圭 中央大学, 文学部, 専任講師 (60311164)
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キーワード | 豪農 / 地方名望家 / 藩地域 / 村落社会 |
研究概要 |
本研究は平成17年度が最終年度となるので、研究成果をとりまとめることに力を注いだ。河内国丹南郡岡村岡田家文書については、一橋大学附属図書館にある同文書の未整理部分の整理・目録作成を定期的に行い、ほぼ整理を完了した。また、それと並行して文書の分析も進め、その成果を科学研究費補助金研究成果報告書にまとめた。そこでは、豪農岡田家の経営内容を、18〜19世紀の長期にわたって総合的に分析し、畿内豪農の経営の特質を、領主や村・地域社会との関わりのなかで位置づけた。また、和泉国大鳥郡上神谷豊田村小谷家文書についても史料の分析を進めて、その成果を上記研究成果報告書に合わせて収録したが、そこでは中世・近世移行期の土豪と村の変容過程を具体的に明らかにした。さらに、信濃国松代真田家文書については、研究成果を単行本『藩地域の構造と変容-信濃国松代藩地域の研究-』(渡辺尚志編、岩田書院から平成17年7月刊行)として出版した。同書においては、藩地域を研究する際の核心的テーマとして、訴訟をめぐる藩当局と領民との関係性の問題を中軸に据えた。近年の身分的周縁論の盛行をふまえて、今あらためて武士-百姓関係という近世身分制の骨格を形成する問題を、訴訟の場への着目という新たな視角から再検討することが重要だと考えたからである。それを軸に、家臣団の内部構造、身分論・集団論、藩における学問・思想状況などの重要課題の分析を加えることによって、豊かな肉付けを図った。さらに、同書全体を通して、武士-百姓関係や都市-農村関係、諸身分集団間の相互関係など、多様な諸関係の坩堝としての「藩地域」像解明を試みた。これは、地域社会論と、藩政史・都市史・身分論・思想史などとの架橋・総合化をめざすものであり、近世史の全体像に迫るための有効な問題提起をなしえたものと考える。
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