研究課題/領域番号 |
15320092
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
日本史
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
久留島 浩 国立歴史民俗博物館, 研究部, 教授 (30161772)
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研究分担者 |
高木 博志 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (30202146)
吉井 敏幸 天理大学, 文学部, 教授 (40150148)
中井 精一 富山大学, 人文学部, 助教授 (90303198)
岩淵 令治 国立歴史民俗博物館, 研究部, 助教授 (90300681)
高橋 一樹 国立歴史民俗博物館, 研究部, 助教授 (80300680)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2006
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キーワード | 近代 / 大和 / 奈良 / コレクション / 水木 / 文化史 / 郷土史 / 史学史 |
研究概要 |
本研究は、明治二〇年代から約三〇年間、奈良県内の教員を歴任した水木要太郎(一八六五縲怦鼡緕O八)が、大和地方の歴史・考古・地誌の研究活動を進めるかたわら、大和古寺の瓦や経典、中世・近世文書、典籍や写本のほか、近世の刊本・刷り物や絵地図・暦本・著名文化人の書簡などを集めてつくったコレクションの復元的研究である。コレクションの内容の豊かさを反映して、日本史学・考古学・建築史学・国文学・美術史学・地理学・社会言語学等にわたる学際的共同研究を行うことが可能であると考えて研究を進めた。しかし、このコレクションは、大部分(六割程度)が国立歴史民俗博物館に収められているが、その他はいくつかの機関・個人に分蔵されており、その全体を把握しない限りは、その歴史的性格を正確に把握することは不可能であることもはっきりした。そこで、本研究では、なによりもまず、このコレクションを「復元」することをめざしたのであるが、史料群の所在と概要を確認し、全体像を示すことができたたことが最大の成果である。国立歴史民俗博物館所蔵史料については網羅的目録を公刊し、今後このコレクションを用いた研究を行う際の基礎的条件を学界に広く提供することができた。次に、定期的に研究会を開催しただけでなく、コレクションに関わる場所での実地調査をも併行して実施したことによって、コレクション形成過程に関わる研究課題と形成されたコレクションそのものの豊かさに内在する研究課題を明確にすることができた。水木が収集を開始した時期は、奈良県(大和地方)が大和朝廷という国家の起源に関わる地として注目されはじめた時期にあたり、とりわけ日露戦争後にその傾向が明確になる。そのなかで水木は、とくに古代大和の歴史と美術、中世大和の寺院をめぐる歴史、近世の大和で活躍した文人たちの文化的な足跡を追跡することに意を注いだ。その意味で、水木コレクションが、大和地方という「国家の起源」や「国家の文化的伝統」を考えるときに重要な意味を持つものであることを確認することができたと考えている。近年、「国民の物語」や国民の歴史認識をめぐる論争が行われ、いわゆる「言語論的転回」の影響下で、ナショナルヒストリーが形成される過程自体の持つ意味が問われている。このコレクションを対象とした学際的な共同研究である本研究は、史資料にもとづく人文科学研究の新しい方法論の提起をも行うものたりうると考える。この成果は、次年度、思文閣出版から研究書として刊行する予定である。
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