研究課題/領域番号 |
15320102
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
日置 雅子 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (40086187)
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研究分担者 |
平井 守 愛知県立大学, 外国語学部, 助教授 (30305510)
西谷 頼子 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (60295574)
垂水 節子 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (60171906)
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キーワード | ジェンダー / ドイツ文学 / ドイツ史 / ベギン会 / 書簡文学 / 労働者文化 / インゲ・シュテファン / フィクション性 |
研究概要 |
本年度は当研究の初年度に当たるため、各自が自己のテーマをかなり自由に追究し、折にふれて報告しあい、共通の認識を築き、テーマを絞りこむ方向を模索した。以下が各自の研究実績である。 1.日置:中世後期の13世紀以降、自治都市化していく都市社会のなかで急速に発展した「ベギン会」を検討した。これは男性の庇護を失ったか、あるいは庇護を否定した女性の半聖半俗の生活共同体で、その修道願望と自立的な組織運営のなかに、ジェンダー意識の覚醒を読み取ることができる。 2.平井:ドイツ・ロマン主義時代の作家の典型例として、クレメンス・ブレンターノとベッティーナ・フォン・アルニムの兄妹を選び、その書簡文学を研究。「書簡」はこの時代に台頭しつつあった市民階級の内面の新たな表現手段で、またドイツ近代文学史上初めて登場してきた女性作家たちのほとんど唯一の自己表現手段であった。この新たなメディアが文学活動と深く結びつくため、関係する一次資料の収集と現地調査をドイツ、オーストリア各地の大学、図書館、文書館等で行った。 3.垂水:03年5月本学で開催された日本西洋史学会大会のシンポジュウムを基に、9名の関係者の共著『革命と性文化』を出版する計画がある。そのために「20世紀初頭・ドイツの労働者文化とジェンダー」と題する論文を用意しつつあり、特に第一次大戦下の女性たちの多面的な活動や食糧暴動に注目する。 4.西谷:本年は理論構築の準備のために、クリスティーナ・フォン・ブラウンやインゲ・シュテファンらの多数のジェンダー研究を整理し、性的役割分担の歴史と文学における「典型的」な理想像の形成をみた。その結果、小説などにみる現実とはかけ離れた「虚像」が、読者の意識のなかに浸透していく過程を論証する方法を取得できた。 全体としてジェンダーでは「虚像」ないし「フィクション」の果す影響力が想像していた以上に大きい、という結論に達した。
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