平成15年度は追加採択を受けた10月以降に研究活動を開始した。 研究協力者である北野重(柏原市教育委員会)、真鍋成史(交野市教育委員会)、大道和人(滋賀県教育委員会)とともに、古墳時代後期の製鉄炉の復元を行うために情報量の十分な遺跡をピックアップする作業から開始した。そのうえで研究対象とすべき重要遺跡の資料を所蔵する諸機関を訪れ、発掘調査時の遺構所見を聞き取りし、また切り取り遺構がある場合は遺構観察を行った。また鉄滓、鉄塊、炉壁、鉱石などの出土遺物に対して実測、写真撮影を実施し、観察表を作成した。なお柏原市、交野市においてかつて実験された製鉄関連資料についても今回、精緻な記録と検討とを行った。そして製鉄技術復元のために必要な金属学的情報を得るために諸機関より鉄滓、鉄塊、炉壁を借用し、研究協力者大沢正己(たたら研究会所属)に依頼して、冶金分析を実施し、成果を得た。平成15年度内に収集した以上の成果をもとに、上記の協力者に木原明(たたら製鉄技術保持者・文部科学省認定無形文化財)を加え、現段階における古墳時代製鉄炉の復元案を策定した。さらに、研究目的の一つである大陸との技術比較を実施するために、朝鮮半島における製鉄遺跡に関する情報収集も行った。 なお、平成15年度の研究成果については平成16年2月28日(土)、愛媛大学法文学部において、「たたらの原形-古墳時代製鉄炉を解剖する-」と題して、研究協力者とともに公開した。
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