研究概要 |
本年度は,新たに宮崎県西都市に所在する西都原81号墳(前方後円墳)の調査に着手した。第1次調査として,墳形と規模を確定するためのトレンチ調査を実施した。調査区は,後円部に4ヶ所,前方部4ヶ所,くびれ部に1ヶ所である。調査成果は多岐にわたるため,以下の4項目にまとめる。 (1)墳形と規模,墳丘構造 ・前方後円墳の墳形は,奈良県纒向石塚,岡山県矢籐治山と酷似し,石塚型の範ちゅうに含まれる。 ・突出部を含まない墳長53m,後円部直径33m,同高4〜7m,前方部長18m,同高2m。前方部前面の墳端は中央が外方に張り出す扇形で,隅角が丸みをもつ。くびれ部幅は9mと狭いが,前方部前面に向かって大きく撥形に開く。 ・墳丘は地山削りだしによって下部を形づくり,上部のみ盛土を行う。斜面に葺石を行わない。前方部の段築は不明。後円部のほぼ中位にテラスを設けた2段築成となるが,テラスが全周するか不明である。 ・後円部側面から前方部前端にかけて,鍵穴形周堀がめぐるが,前方部隅角で収束する。 ・後述するように,後円部背面側に造出し状の突出部を確認している。 (2)くびれ部の埋葬施設 西くびれ部に,墳端に沿って2基の埋葬施設を検出した。ひとつは舟形木棺(長さ約4m),いまひとつは箱形木棺(長さ約1m)。副葬品,赤色顔料は確認できなかった。 (3)後円部背面側の造出し状突出部 墳丘主軸からずれた位置に,幅10m,長さ12m,墳端からの高さ2mの造出し状の突出部が確認された。この施設は,地山整形によって形づくられているから,後円部本体と同時に築造されたとみてよい。頂部平坦面端の斜面側に控え積みをともなう葺石状石積みが「コ」字形にめぐる。 (4)築造時期 後円部背面の調査区から,二重口縁壷,高杯,小型台付き鉢などの土器が出土した。器種構成からみて埋葬儀礼に使用された容器類とみてよいだろう。当地域の土器編年が未整備のため細部が不明だが,庄内式新〜布留式古段階に併行する可能性がたかい。 以上から,本墳は古墳出現期にさかのぼり,西都原古墳群形成の端緒となった前方後円墳の可能性がたかい。
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