本年度は、掘立柱建物・礎石建物遺構の基本的属性について検討し、基準となる項目(データ項目)を抽出・作成した。その項目としては、基部構造、桁行・梁行の規模、平面構造、平面形式、柱筋、対向側柱位置、妻柱位置、柱掘りかた形状・規模、礎石形状・規模、基壇形状・規模、外周柱穴列(縁・足場穴等)の有無と形状・配置、雨落ち溝、階段など約120項目を抽出した。そして、各項目ごとに、既往の研究成果を収集・整理し、暫定的な型式分類をおこなった。これらの各建物属性の項目や各項目ごとの分類内容については、資料収集作業や資料分析によって順次改訂しながら、完成度の高いものにしていく予定である。 そして、これらの建物遺構の属性項目について、データベース化の相関図を作成し、旧来の遺跡データベース構造を見直し、新たなデータベース構造を作成した。 本年度は、上記のデータベース項目にしたがって、主に関東以北の国府・郡衙・城柵遺跡・豪族居宅などの発掘調査成果を中心として建物遺構の資料収集をおこない、約2000レコードのデータベース化をおこなった。その資料収集によって、東北城柵地域には特異な建築基部構造や平面構造を採用している建物例が少なくないことが判明しており、東北地域における在地の建築技術の導入如何や環境との関わりなどが問題として浮上してきている。また、東北地域については、城柵にみられる櫓の造営技術に関する検討にも着手した。 また、これまでの発掘調査ではあまり重視されることが少なかった柱掘りかたの深さの問題が、掘立柱建物における基壇の有無や整地との関係、柱材の調達や再利用との関係で重要な意味をもつことが改めて明らかになってきている。
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