研究課題/領域番号 |
15320121
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
池田 光穂 熊本大学, 文学部, 教授 (40211718)
|
研究分担者 |
佐藤 純一 高知大学, 医学部, 教授 (70295377)
慶田 勝彦 熊本大学, 文学部, 助教授 (10195620)
田口 宏昭 熊本大学, 文学部, 教授 (20040503)
|
キーワード | 保健システム / 医療人類学 / 価値の多元化状況 / 近代医療 / 伝統医療 |
研究概要 |
国家主導の保健システムが、社会に受容され大衆化する社会過程がどのようなものであるのかを具体的に解明するのが、本研究の第一の目的である。この目的を実現するために、(1)歴史的資料による過去の社会過程に関する変容についての従来の議論の整理、(2)共時的な視座としての医療システムの機能主義的議論、(3)社会システムにおける医療の役割(=部分的機能)を整理する研究に着手した。また20世紀初頭前後の科学的医療の国家制度への組み込みと、同時期における帝国医療の実態について全地球的観点から資料収集をおこない、医療化現象に先立つ近代医療の優位性の確立に関する仮説を検証するのが、本研究の第二の目的である。これに関しては、国民国家と近代医療制度が密接に関連した日本や開発途上諸国のような地域における公衆衛生政策や大衆保健運動に関する基礎資料の収集を、インターネット情報を含む文献調査[担当:田口・慶田]ならびに、マレーシア、ベトナム、シンガポールへのフィールド調査[池田・佐藤]を通しておこなった。 個別研究では、(i)キリスト教宣教医療と植民地医療に普及過程の歴史人類学的検討、(ii)医療的多元化に関する資料収集、(iii)先進国における近代医療の大衆化過程の検討、(iv)世界各地の大衆保健運動の社会動態の比較研究をおこなった。計画初年度であり、文献収集、現地資料の査察、データベースの構築などが中心となった。 今年度の研究の反省としては、本研究のオリジナリティが予想していた以上に高いために、モデルとしたい先行研究が意外と少なかったことと、20世紀年以降の関連資料が際限なく多いために、当初目論んでいた全資料収集がマンパワーと資金不足により変更せざるを得なくなったということである。他方で、本研究に関心をもつ若い研究者が現れてきており、本研究が保健システムの歴史の再検討という学問的価値を有するのみらなず、未来の保健システムを考える際に不可欠の歴史的教訓となる期待も意想外に大きいこともわかった。新年度より他領域との研究交流を一段と進めてゆくことで、これらの変更に伴う欠点を改善していきたい。
|