研究課題/領域番号 |
15320124
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
文化人類学・民俗学
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
新谷 尚紀 国立歴史民俗博物館, 研究部, 教授 (80259986)
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研究分担者 |
宇田川 武久 国立歴史民俗博物館, 教授 (70104750)
吉岡 真之 国立歴史民俗博物館, 教授 (90290858)
関沢 まゆみ 国立歴史民俗博物館, 助教授 (00311134)
三浦 正幸 広島大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80136134)
小椋 純一 京都精華大学, 人文学部, 教授 (60141503)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2005
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キーワード | 神社機能 / 多面性 / 14世紀と16世紀の衰微 / 兵杖と儀杖 / 神宝 / 社務日誌 / 社叢 / 樹木調査 |
研究概要 |
本研究で得られた知見の一部をあげれば以下のとおりである。第一に、古代の神社の多くが原初について不明であるがその点自体が重要な意味をもつ。出雲大社の場合でも、記紀神話によるイメージが広く流通しているが、歴史的にその存在が確認できる最初期の文献史料は天平神護元年(765)に神封61戸を充てたとする『新抄格勅符抄』の記事である。神話解釈とは別の次元で歴史考古学的な実証研究が不可欠である。第二に、通史的にみて、14世紀(南北朝期)と16世紀(戦国期)に衰退や退転を経験し17世紀になって復興が行われた歴史をもつ神社が多い。その大きな衰退を経験しなかった神杜の所蔵資料の価値は高く、厳島神社の例など貴重である。奉納銘のある遺品や関連の古文書を添える遺品もあり、武器武具の編年、兵杖と儀杖との関係論、神宝論などの上で貴重な資料情報となる。また、膨大な近代の社務日誌類は、海浜に立地する特別な条件下で如何に自然災害に対処し克服して神社を維持してきたか、修復技術をはじめ歴史情報が得られて貴重である。第三に、神社の杜、社叢は象徴的な意味をもたされやすいが、その植生の変遷史は確実であり、老木に見える場合でも樹齢は比較的若いという事実も重要である。祇園八坂1神社の場合でも、近世の文献や絵図からは祇園といえば松林が一般的であったことがわかるが、現在ではそれに代わって常緑広葉樹のクスノキが主要な樹種となってきている。そうした中で注連縄を張られた老木は枯木の巨株も含めて落葉広葉樹のムクノキかエノキで、それらはかつて松とともに重要な位置を占めていた樹種であったと考えられる。しかし、それらも近世には若木であり樹齢も近世初期以前に遡れる可能性は少ない。祇園の杜は今後ますます害虫や病気に強いクスノキを主体とする照葉樹林となっていくものと予想される。このような神社の杜の樹木調査の重要性が再認識された。
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