研究課題/領域番号 |
15330001
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松村 良之 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (80091502)
|
研究分担者 |
今井 猛嘉 法政大学, 法学部, 教授 (50203295)
林田 清明 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (50145356)
長谷川 晃 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (90164813)
山田 裕子 北海道大学, 大学院・法学研究科, 助手 (10360885)
|
キーワード | 応報 / 分配 / 修復 / 公正の心理学 / 法人処罰 / ナポレオン法典 / フランス刑法 / 犯罪被害者 |
研究概要 |
今年度は心理学的観点からは、第1に、社会心理学の古典によりつつ、刑罰を科すという行為の心理学的性質について、学説史的、理論的な理解を試みた。第2に、ホーガンとエムラーに始まる応報的公正の心理学によりつつ、応報動機とはなにか、それはいかなる公正動機なのかという点について検討を加えた。そこでは、応報動機は社会的規範への侵害があった時に、侵害者に懲罰を加えようという動機づけであり、分配的公正(懲罰は負財の分配と理解することもできる)とは基本原理において異なること、その一つの帰結として、被害者個人の反応ではなく、社会の成員一般の反応であることが明らかにされた。法哲学的観点からは、第1に、刑事における人々の個別の報復感情に対して公共的制度のもとでいかにして適理的(reasonable)に答えるかについて、応報と修復の二つの正義の共存と相互関係の枠組みがどのように理論的に整理できるかが重要であり、応報的正義と修復的正義の交錯の重要性が示された。第2に、そのような観点から、公共的制度の基本原理をひとの福祉(human well-being)の見地から統合的に明らかにすることで、応報と修復の機能分担の基本原理を明確化した。刑事法的観点からは、応報的正義の妥当範囲を検討するため、法人処罰の可否について基礎的研究に着手した。日本では、本格的な法人処罰は立法論であるが、世界に視野を転ずるならば近時、ナポレオン刑法典以来の伝統から脱却し、法人処罰を刑法の明文で規定したフランスの動向が極めて重要であることが認識された。修復的正義の妥当性については、被害者保護施策の拡充を視野に入れた検討を行うことが重要であることが認識され、いくつかの被害者保護施設について、その現状の調査を行った。
|