研究課題
本年度は最終年度であり、各メンバーはこれまでの研究および研究会を通して共有化された「コア・エグゼクティヴ」概念をキィとして論文を書き上げることを最優先の目標とした。書き上げられた論文は、いずれも高水準で、各国の最先端の理論的動向を共有しつつ、各国の「コア・エグゼクティヴ」の特徴とそのダイナミクスを理論的かつ実証的に明らかにした。鹿毛論文は、多くの文献を渉猟し米国をはじめ各国の大統領制研究の到達点を批判的にまとめた。阪野論文は、英国を発祥地とする「コア・エグゼクティヴ」概念の本質を正確に捉え、かつ英国について実証的研究を行い、政治システムの脱集権化におけるコア・エクゼクティヴの集権化という逆説を析出した。曽我論文は、コア・エグゼクティヴ・ネットワークを「情報共有型」と「機能特化型」という軸によって比較可能な形で操作化し、調査データを基礎に近年の諸改革に生じた各省庁の変容の類型化を示した。伊藤論文は、制度・コンテキスト・戦略を重視するコア・エグゼクティヴの研究枠組により、選挙制度改革および中央省庁再編のインパクトが一定の帰結をもたらすメカニズムを説得的に明らかにし、玉田論文は、同様の枠組からタイのコア・エグゼクティヴを分析し、興味深いことに少なくとも現象的に日本のそれと類似する諸現象を明らかにしている。これらの研究から得られる観察として、一方で世界各国の政治は多元化の傾向を示すが、他方で各国固有の歴史、制度、およびダイナミズムを示しながらもコア・エグゼクティヴの集権化が共通に起るという興味深い逆説が指摘できる。今後は、この共通傾向をもたらす要因の探求と、この一般的傾向と各国固有の特徴の相互作用を分析していくことが有意義な課題となると思われる。本科研費による研究では、新しい多くの知見を明らかにされた。また今後のわが国における執政研究に資するところが大きいと思われる。
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レヴァイアサン 38号(4月刊行予定)
国際文化学研究 24号
ページ: 1-39
社会科学研究 第57巻第2号
ページ: 67-91
アジア・アフリカ地域研究 4-2
ページ: 167-194
阪大法学 55巻1号
ページ: 67-87