研究課題/領域番号 |
15330034
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
後藤 乾一 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 教授 (90063750)
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研究分担者 |
塩崎 弘明 長崎純心大学, 人文学部, 教授 (90123835)
吉野 文雄 拓殖大学, 海外事情研究所, 教授 (90220706)
波多野 澄雄 筑波大学, 大学院・人文社会科学系, 教授 (00208521)
山崎 功 佐賀大学, 文化教育学部, 講師 (60267458)
玉木 一徳 国士舘大学, 文学部, 教授 (00207226)
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キーワード | 国民国家 / エスニシティ / ASEAN / 言語 / 文化政策 / ヴァチカン / 復興 |
研究概要 |
2002年に独立を果たした東ティモール民主共和国は「国民国家」形成に向けて多くの難問。課題に直面しているが、本研究はその課題を明らかにし、具体的な政策提言に向けて研究会を重ね、海外調査をすすめるなかで以下のような実績をあげつつある。 まず東ティモール国内問題に関しては、和解と教育の問題に着目する。住民和解に関しては「真実と和解委員会」の地道な活動の一方で隣国インドネシアのプレゼンスの変容が非常に重要な鍵となっている。いうまでもなくインドネシアナショナリズムに対する反発のなかでカトリック、テトゥン語を求心力として生れた「東ティモール」ナショナリズムであるが、独立後の今日、その「変質」傾向を見逃すことができないようである。すなわち、反インドネシアの旗頭となってきたカトリック及びそれを「後押し」してきたかたちのポルトガル(語圏諸国)の影響の相対的低下に対する政権エリートの危機感、さらに「国語」としてのテトゥン語教育が基盤整備の遅れもありその普及にはかなりの時間と労力を要するという現実である。こうしたなか、公式統計には表れないかたちでの隣国インドネシアとの経済的結びつきは復興がすすむにつれてますます重きをなしてきており、かつての「敵」インドネシアに対する経済依存の現実、少数エリート言語としてのポルトガル語の凋落とともに、テトゥン以外の多様なエスニックグループをも横断する唯一の「共通語」としてのインドネシア語およびインドネシアの存在感は否応なく大きくなりつつあるようである。 一方国際環境の側面ではCLIP、ブラジルの文化経済援助などが行なわれているが、ベロ司教の引退、政権内部の権力構造の変化と相まってその影響は確実に低下しているようである。しかしながら域内安全保障・経済協力で役割を果たすべきASEANおよびインドネシアにしても政治社会混乱による地位低下、中国、タイの台頭などの一方でその先行きは不透明である。 このような問題認識のもと、中間業績をとりまとめつつ目下研究を継続中である。
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