研究概要 |
1 本研究では、主として次の事項に関する考察を試みた。 (1)1960-2000に亙る国調データに基づくロキシー指標分析により判断される、2000年時点に於ける空間的循環段階。 (2)クラッセンが唱える空間的循環過程(spatiale cycle process)仮説。 (3)途上国に於ける高齢者を取り巻く居住環境並びに都市圏と中山間地の間の人口移動。 (4)人口予測値評価指標。 2 本研究で得られた主な知見は次のとおりである。 (1)東京都市圏内主要鉄道沿線地域の一つである高崎線沿線地域の空間的循環段階について見ると、高齢者人口の4範疇[APO(75歳以上高齢者人口),APY(75歳未満老年高齢者人口),APW(同居高齢者人口),及びAPA(別居高齢者人口)]は、後期郊外化段階にあり、すでに再都市化段階を目前に控えている地域総人口のポジションを後追いしつつ都心回帰を指向している。また、APWはAPAに先行している。 (2)那覇都市圏内主要二幹線道路(国道58号線<R58>及び国道329号線<R329>)沿線地域の空間的循環段階について見ると、高齢者人口は両地域で非高齢者人口のポジションに先行し、すでに都心回帰段階を迎えている。 (3)クラッセン仮説及びロキシー指標を基盤とする「人口の空間的集散過程分析パラダイム」は、高齢者人口の空間的循環段階の考察に、有効なアプローチとして機能する。 (4)本研究で開発を試みた「人口予測値の適合度を示すJ^2指標」は、予測値評価手段として有意義である。 (5)考察対象とした途上国(タイ)の山村高齢者による都心部への移動は、現在殆んど見られない。しかし今後、高齢者の居住環境改善に寄与するNGOヴォランティア活動の結果が、都市サイクル・ポジションの中で見られる高齢者人口の都市移動を、有意に促す可能性が少なくない。
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