研究概要 |
2004年度には、3年間かけて内閣府経済社会総合研究所(ESRI)と協力して作成してきた約90業種別に日本全体の全要素生産性を測定する統計を完成させ、ESRI/HISTAT JIPデータベースとしてウエッブ上で公表した。JIPを用いた主な研究成果は次の通りである。 1.Fukao, Inui, Kawai, and Miyagawa(2004)では、産業別に全要素生産性の上昇率を測定し、その決定要因を分析した。その結果、90年代には製造業を中心に生産性上昇率が停滞したこと、一方規制緩和が進んだ放送・通信、商業等の産業では生産性上昇率が加速されたことが分かった。 2.Miyagawa, Ito and Harada(2004)では、IT投資や研究開発投資の状況を国際比較し、日本においてこれらの投資が生産性上昇に与えた影響を明らかにした。 3.Ito and Fukao(2005)では、JIPを使って、貿易に体化された生産要素を測定し、東アジア諸国との垂直的分業を伴う産業内貿易が、国内の生産要素需要に大きな影響を与えている可能性があることが分かった。この他、企業活動基本調査の個票を用いて生産性停滞の原因を探ったFukao and Kwon(2005)やM&Aが投資先企業の生産性上昇に寄与することを示したFukao, Ito and Kwon(近刊)、アジア諸国および米国の労働生産性を比較し、均衡為替レートの動向を分析したMiyagawa, Toya and Makino(2005)、1930年代における購買力平価を算出し、日・韓・台間の一人当たりGDPを比較したFukao, Ma and Yuan(2005)、JIPの付帯表を用いて対日直接投資の阻害要因を探ったIto and Fukao(2005)、等の研究を行った。また、JIPを更新する作業を進め、2005年初夏には直近データまでの更新が完成する見通しとなった。
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