Kubota et al.(2006)は、株式非保有者の存在を考慮したモデルと収入へのショックが長期にわたるモデルを家計調査10分位データでテストした。株式保有比率の高い高所得者の消費ではリスクプレミアムパズルは解決できたが、長期にわたる収入へのショックを考慮してもリスクプレミアムパズルは解決できなかった。Basuand Wada(2006)は、収入へのショックが長期にわたるモデルを2国モデルに拡張した。アメリカを本国とし日本を外国としたモデルでは、リスクプレミアムパズルばかりでなく、為替プレミアムパズルも同時に解決できることを実証的に示した。Maki and Wada(2007a)では、データに国民経済計算と家計調査を用いた。推定に使う操作変数を決めたあと、季節調整法の違いが1財モデルCCAPMのパラメーターに与える影響をテストするために、操作変数のすべての組み合わせについて推定と検定を行った。既存研究とは異なり代表的個人を仮定し効用関数にCRRAをおいたモデルで、危険回避度及び時間選好率パラメーターの値が妥当であるモデルが存在することが確認された。モデルが正しいと仮定した上で、モデルと整合的な季節調整法は、変数変換の最後に季節調整をした場合と、季節調整をまったくしない場合の両方にあった。Maki and Wada(2007b)は、消費財を2財に拡張したモデルを開拓した。モデルが正しいという仮定の下で、モデルと矛盾しないパラメーターセットをGMM推定によって求めたが、オイラー方程式に収益率を使い消費額は家計調査データを使った時系列のみに理論と整合的なパラメーターが得られた。季節調整を施さない時系列では、1財モデルとは違い、理論と整合的な結果は得られなかった。また、季節調整法として、季節調整の回数は少ないほどよいという結果を得た。
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