本研究の最大の課題であった、日本紡績協会資料と旧三和銀行資料に関する目録を完成させることができた。資料を1点ずつ点検した上で作成者、タイトル、作成年月、冊子・一枚物等の区別、記載事項の概要、保存状況などをパソコンに入力し、整理点検のうえ、『日本紡績協会寄贈資料目録』および『旧三和銀行資料目録』として完成させた。いずれも貴重な資料目録であり、金融史、紡績業史、在華紡研究などの進展に貢献することが期待される。 こうした作業と並行して、研究代表者と研究分担者は東京、大阪、福山などで中小企業の経営発展をささえた産業・教育インフラに関する調査も進めた。その結果、裏面に示されたような工業学校や工業試験場に関する研究を発展させることができた。化学に力点をおいた大都市の工業学校の活動、中小織物業者みずからではなかなか困難なマーケット情報に対応した工業試験場による新製品開発と織物業者に対する公開など興味深い事実を明らかにすることができた。こうした中小企業の発展を支える制度的諸条件と金融史研究を架橋することは、今後の大きな研究課題の一つである。 もう一つの課題である銀行大口貸出先の分析については、個別情報の入力、業種別区分などにとどまり、問屋金融の動向などが分かる具体的な分析にいたらなかった。しかし今後とも他の関連資料の収集・分析を続けることで、繊維産業の金融基盤、問屋の資金調達の実態などについてもさらに研究を進めたいと考えている。
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