研究概要 |
昨年度に岩手県と東京都において60-69歳の男女を対象として対象者ならびに配偶者の両親の介護経験と相続経験、介護と相続についての一般的意識などに関する面接による質問紙調査を行い、今年度はその分析を行った。分析対象は東京都が710名、岩手県が901名である。今年度は父母,義父母が4人ともすべて死亡しているサンプルだけを対象に、死亡年代別と地域別に介護についてどのような時代的差異と地域的差異が見られたかを主に分析し、次のようなことがわかった。 1)寝たきり期間、寝たきりではないが介護が必要な期間は、いずれの場合も近年の死亡者のほうが長かった。2)要介護期間は母寝たきり期間のみ有意に長期化していた。3)死亡時同居率は近年の死別者のほうが低いということはない。岩手県で東京都より同居率が高い。岩手県では父親の80%が子どもと同居していたが、東京都では67%にすぎなかった。母親については岩手県では83%、東京都では73%で父親よりやや同居比率が高い。4)配偶者介護は減り、嫁の介護が増えていた。また、家族介護者数は東京の父以外は増加していた。岩手県では父親の介護については母52%、長男の配偶者44%、長男38%に対して、東京都では母50%はあまり差異がないが、長男の配偶者は13%、長男は8%に過ぎず、岩手県のほうが特に長男夫婦の介護への貢献が高い。6)母親について、介護者は岩手県では長男の配偶者が49%、長男が8%、配偶者(父)は3%、東京では長男の配偶者が31%、長男が11%、配偶者(父)は5%にすぎず、父の場合と母の場合の違い、地域別の差異が目立つ。7)岩手県の方が同居率が高いため福祉サービスを使わないということではない。岩手県の方が福祉サービスを利用していた。8)父親については岩手県では51%、東京都では37%ほどが病院や老人保健施設への入院・入所をしていた。同居が多い岩手県のほうが入院、入所の比率が高いことが注目される。9)母親の介護のみ、東京でのみ最近ほど利用が高率になっている。10)病院への入院は父母とも両地域とも時代で有意差はみられず、サービスの中で利用率が最も高い。 この結果は第78回日本社会学会大会〔法政大学〕において「介護(経験)の時代的変遷-東京都・岩手県の調査から-」としてポスター発表を行った。 今後さらに分析を進める。
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