平成16年度に東京都と岩手県で60歳代を対象に、親の介護と相続について調査した。平成17年度には時代と共に介護の状況や相続の状況がどのように変化してきたのかを分析した。その結果、時代とともに、1、要介護期間がより多くの親に出現するようになった、2、しかし、寝たきり期間要介護期間は長期化せず、母の寝たきり期間のみが長期化した、3、死亡時の子の同居率は減少していない、4、配偶者が介護するケースは減り、嫁の介護が増えた 5、家族介護者数は増えてきたことなどがわかった。また6、岩手の方が同居率が高く、嫁の介護が高率であるが、福祉サービスはより多く利用していた。 平成18年度は、介護分担や相続などについても分析し、報告書にまとめた。その結果、1、長男が同居し、長男夫婦が介護をし、相続は長男がしたという伝統的なタイプがこの世代の親の介護については依然として多数派であった。しかし2、介護と相続の様相は父親と母親のいずれが先になくなったのかでかなり異なることが判明した。たとえば父親が先に亡くなった場合、介護で主要な役割を果たすのは母親である。相続についてはこの世代では父親が資産の所有者であることが多く、母親が先に亡くなると相続はほとんど発生しないなどのちがいがある。そこで、さらに父親が先に亡くなったケースのみを対象に、相続や介護の状況、父親の死後住んでいた家屋に誰が住み続けたか、と共に母親は誰かと同居したか、母親は遺産相続をしたのか、などの分析を行った。3、母親では相続放棄もかなりの数にのぼり、4、子との同居率は高く、また引き続き同じ家屋に住み続けた例が多かった。5、ただし、これは岩手県で典型的であるが、東京では持ち家を持たない、相続財産を持たないケースも岩手より多く、また母親本人の相続も多かった。より詳しい分析結果を今年10月のアジア・オセアニア老年学会(北京)で発表する。
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