16年度は、15年度と同様、国内および海外での調査を継続して実施した。 1.国内調査では、前年度の医師、看護師に続いて、京都府の一般市民を対象に「カルテ開示に関するアンケート調査」を行った。現在のところ集計中であり、分析を待つ必要があるが、3年前に行った滋賀県の市民調査と比較することでこの間の経時的変化を覗うことができそうである。特に、市民の医療に対する関心は増しており、自分の医療情報について医師から説明を受けたい、あるいは自分の医療情報を自分で管理したいという意識は、都市部と郡部を問わず、強くなっている。この4月より個人情報保護法が施行されるが、その関連で医療情報についての開示請求が増加することを予感させる。 2.前年度のインタビュー調査を継続させているが、今年度は特に看護師の方へのインタビューが多かった。日本看護協会は早くからガイドラインを作り開示に積極的であったが、現場では多様な対応がなされていることがわかってきた。その関連で、当初の計画にはあげていなかったが、電子カルテ化を進めている某病院の看護部と共同して「電子化に伴う看護記録の書き方の変化および開示」のアクション・リサーチに取り組んでいる。 3.海外調査は、オーストラリアのアデレードにあるクイーンエリザベス病院とホスピスを訪問した。オーストラリアの医療システムはGPがあるなど英国に類似しているが、国民が多民族の移民から成り立っているため、医師や看護師は患者とのコミュニケーションに注意を払い、またそのノウハウを蓄積している。興味深かったのは、医療関係者が一様にカルテは医療機関に帰属すると強調していた点である。次年度もオーストラリアで調査を継続する予定である。
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