17年度は、本研究課題の最終年度にあたる。前年度に引き続き、国内調査データの解析を進めるとともに新たな国外調査値として台湾での調査を実施した。 1.国内調査では、前年度まで行った医師、看護師、市民の各データを引き続き分析した。特に市民調査は、個人情報保護法の施行と重なっていたこともあり、これまで以上に医療情報開示に対する関心が高まっているという結果が出ている。学会報告ではないが、個人情報保護法と医療情報開示の関連について、現場の人びとに講演する機会が何度かあった。 2.前年度に引き続き、電子カルテ化を進めている県下の病院の看護部と共同して「電子化に伴う看護記録の書き方の変化および開示」のアクション・リサーチに取り組んだ。17年末には、主に看護記録の開示に関するシンポジウムを滋賀県立大学で開催し、現行の申請型ではなく、日常的な診療の中で患者とともにカルテを作成していく実践について当該病院の看護師も参加して話し合ったが、本アクション・リサーチも最終的にはそのような方向をめざしている。 3.海外調査としては、台湾を訪れた。台湾は、急速な健在成長を背景に医療環境も整備されつつあり、おなじ東アジア圏の国として興味深く比較することができた。訪問したのは、高雄を中心とした南部にある3病院であったが、そのほか医療と連携している福祉企業の方とも話し合いをもった。カルテはわが国と同様に電子化の途上にあり、紙カルテと電子カルテが混在していた。診療室ではディスプレイに表示される病名等を患者が直接見ることも可能であるが、アウトプットを要求する方はいないとのことであり情報が患者自身にも帰属するという意識は薄いようである。ガン告知も患者本人よりも家族を優先させるのが一般的であるとどの医師も回答していた。 4.最後に、成果の一部は公表しつつあるが、最終年度として報告書をまとめている。
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