研究課題/領域番号 |
15330099
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
富永 茂樹 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (30145213)
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研究分担者 |
田中 祐理子 京都大学, 人文科学研究科, 助手 (30346051)
籠谷 直人 京都大学, 人文科学研究科, 助教授 (70185734)
山室 信一 京都大学, 人文科学研究科, 教授 (10114703)
白鳥 義彦 神戸大学, 文学部, 助教授 (20319213)
藤原 辰史 京都大学, 人文科学研究科, 助手 (00362400)
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キーワード | 石炭から石油へ / テレビ / 郊外 / 大衆文化 / 団塊の世代 / 1968年 |
研究概要 |
1960年代における生活世界の変化は、われわれが想像した以上に大きなものであり、また広い範囲にわたって確認できるものでもあった。それはとりわけわが国においては「流体化」という言葉でもって呼ぶことができるであろう。つまりエネルギーが石炭(個体燃料)から石油(液体燃料>へと変化するが、この変化は太平洋ベルト地帯への人間の集中的な移動、自動車の普及などと並行して進み、さらには移動してきた人間の居住空間としての郊外の開発、その内部での電化製品(とりわけテレビと洗濯機)の普及などをもたらすことにもなる(1965年には普及率が95パーセントにまで達するテレビは、活字による情報伝達が電波によるものに変わるという点で、これもある種の「流体化」にほかならない)。 世代にかんしていうなら、いわゆる「団塊の世代」が10代から20代はじめを生きた時代であったという点が注目できるところである。彼らは音楽関係の電器製品を購入する消費者として、また50年代後半からはじまったテレビの視聴者やマンガの読者として、生活様式の大きな変化の影響を直接に受けるとともに、やがて70年代へと受け継がれてゆくことになる新たな生活意識を創り出しもした。しかしまた、生活が安定し快適で便利なものになる変化の他方で、ある種の平板化が進んだこともいなめない。ここから生じるある種の不安と不満は1968年の世界各地での学生の叛乱とどこかでつながっていたはずである。 サブ・カルチュアの拡大や学生の叛乱と密接な関係にあるのが教育・研究の世界における変化であった。これについてはさらに個別の研究を待たなくてはならないが、とりあえずはふたつのことを指摘しておける。まずはテレビやマンガなど大衆文化の拡大がその裏側では従来の「教養」の衰退あるいは変容という事態を惹き起こしたということであり、もうひとつは学問がその対象よりはむしろ方法・視点について過去のそれとは大きく変わりはじめたということである。こうして伝統的な生活様式とそれにまつわる意識は、この時期にあらゆる点で大きく変貌したのであった。
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