研究概要 |
本年度は,過去2年間にわたる研究成果の整理とデータの分析・補充の作業を進めることで報告書を作成していった. まず,昨年度川崎市の菅生地区と横浜市のあざみ野地区で行った調査データの分析を実施した.その結果,東京大都市圏における京浜地区の特性として,地方出身者と東京出身者の2つだけではなく,横浜・川崎周辺出身者がある程度量的に存在することが確かめられた.つまり,東京大都市圏と京浜地区の社会的形成過程において,地方出身で東京圏に流入した年代,東京を経由して京浜地区に定着していった年代,さらにすでに定着した京浜地区出身の年代が存在し,それぞれ地域にたいして異なった指向をもっていることが明らかになった.つまり,60代は地方出身ないし東京経由の流入者で,京浜地区の住宅地が形成される過程で定着していった年代であり,これまで積極的に地域活動に関わってきた人々である.これにたいして30代から40代には京浜地区出身者が多く,子ども関係以外にはそれほど積極的な地域との関わりをまだ示していない.50代がちょうど中間的な性質をもち,地域にたいする関わり方が60代と比べて徐々に変わってきていることが確認された. 他方,このような特定地区を対象としたコミュニティ調査との関連で,社会地区分析を用いたより広い都市全体の空間的な構造についても分析を進めていった.その結果,東京大都市圏全体の中での京浜地区の位置づけや,工業地帯や交通機関の整備との関連で形成されてきた京浜地区臨海部の歴史過程,ならびに東急不動産による住宅地開発との関連で形成された京浜地区内陸部の社会的な形成過程を明らかにすることができた.こうしてコミュニティ調査の結果をより広い視野から位置づけことが可能になり,予想以上の成果を得ることができたように思う.
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