研究課題/領域番号 |
15330108
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研究機関 | 文教大学 |
研究代表者 |
小坂 勝昭 文教大学, 国際学部, 教授 (10004087)
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研究分担者 |
竹田 仁 文教大学, 情報学部, 教授 (20188197)
石塚 浩 文教大学, 情報学部, 教授 (60223012)
山田 修嗣 文教大学, 国際学部, 講師 (60337524)
茅野 広行 江戸川大学, 経営社会学科, 教授 (90327239)
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キーワード | 中国進出企業 / 環境経営 / 市場社会主義 / 工場移転 / 技術移転 / 環境マネジメント |
研究概要 |
本調査研究は、中国進出企業、および中国国営企業、中国私営企業の経営戦略のなかに環境経営的発想がどの程度組み込まれているのか、あるいは環境経営を実施するに必要なノウハウ、あるいは製品作りがどの程度実践されているのか、こうした問題意識をもって中国企業の調査を実施した。今の中国で、こうした「環境マネジメント」という発想を経営者が積極的に採用するか否かに関心をもたざるをえないのである。かつて日本でもISOを積極的に取ろうとする経営者は少なかった。というのは、環境対策はコストばかりかかり利益にならないという発想があったためである。従って、中国でも環境対策を経営に組み込む努力を積極的に行う経営者がいればいいのだが、という思いをもって中国にはいった。北京の社会科学院で中国社会学会会長の陸学芸教授に会い、中国の環境問題に関して指導を頂き、調査がはじまった。中国では優良企業として表彰された「北京旭硝子電子有限公司」が突然に天津の工業開発区に工場移転を命じられた。北京オリンピックを控えて、北京から公害企業や産業廃棄物を出す企業を締め出そうとしているのである。杭州市ではあの有名な観光地である西湖が数百年間にわたり垂れ流しを続けた結果、ヘドロの除去と環境整備の必要性がでてきて巨額な環境投資が始まっていた。上海、杭州、蘇州、青島、北京、天津、と調査のために訪問した企業の経営者はさまざまであったが、比較的に若い世代の経営者は環境重視の姿勢がうかがえた。遅れているのは国営企業であり、生産設備の老朽化が目立つ状態で、環境対策にまで経営思索が十分にいきわたらないという状況であるように受けとめざるをえなかった。市場社会主義という一国二制度を成功させようとしている中国の経済が今後どのような方向をたどるのか、環境問題の克服にどのような政策を提案していくのか、興味はつきない。ただ言えるのは、現在の中国の可能性をささえる積極的なエネルギーである。今後も中国の環境ビジネスの展開に関心を持っていきたい。環境マネジメントが成功すれば市場社会主義経済の意義を認識せざるを得なくなるだろう。また中国に進出して生産活動をおこなっている日系企業がこれまでに形成した環境技術の移転も今後さらにおおきな意味をもつかも知れない。しかし、知的所有権問題がらみの紛争も起きるであろう。環境問題の重要性にいち早く気づき、対応策を講ずる必要性の認識は中国の大学の環境学部の設立も重要な役割を持つと思われるのである。
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