研究概要 |
介護保険制度に対する評価を目的として、東京都下A市の同一地域において,ほぼ同じ調査票を用いて行った介護保険制度実施前の2回の調査(1996年,1998年)と介護保険制度実施後の2回の調査(2002年,2004年)から収集されたデータのデータベースを作成し、保健福祉サービスの利用状況の変化と家族介護者自身の心身の状況および社会生活の変化を明らかにすることを試みた。今回取り上げた4つの主要な保健福祉サービス(ホームヘルプサービス,デイサービス,ショートステイサービス,訪問看護サービス)については,介護保険制度実施後にすべてのサービスの利用率が増加していた。しかしながら一方で,介護者の心身状況(身体的健康、精神的健康)、介護負担(精神的負担感、社会生活上負担)、及び社会生活の変化については,介護保険制度実施前後では顕著な差がみられなかった。つまり,サービスは利用してはいるが,その利用が介護者の負担軽減までには至っていない可能性が示されたわけである。さらに、要介護高齢者を心身の状況と介護状況に着目して8つの類型に分け、各々の類型についてサービスニーズに対する充足度を検討したところ、必ずしもすべての類型においてサービスニーズが充足されているとは限らないことが明らかになった。以上のような結果から、介護保険制度に関する評価については、提供されるサービスの量の側面だけでなく、サービスの質の側面についても吟味される必要性が示唆された。
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