研究課題
インターネットが社会関係資本に及ぼす影響についての因果分析するために、山梨県で行った第1回と第2回データを分析した上で、第1回回答者に対して第3回調査を実施した。まず、第1回と第2回調査結果から明らかとなった主な点は以下の通りである。(1)携帯メールはサポートを提供してくれるような強い紐帯を、PCメールは多種多様な人々との弱い紐帯を維持・形成する機能がある。(2)携帯メールの利用はインフォーマルな社会参加を、PCメールの利用はフォーマルな社会参加や争点参加を促進していた。したがって、PCメールの利用によって広く開かれた中間集団への能動的社会参加という(橋渡し型)社会関係資本の増大が期待されるが、携帯メールは私的でインフォーマルな社会的文脈で生起しているためにそのような効果は見られなかった。(3)PCメールの利用は非寛容を減らす傾向があるのに対して携帯メールは増加させる傾向がある。これは、携帯メールによるコミュニケーションが強い紐帯を介したものに偏っているために、「内輪」で固まり、異質な他者への寛容性が減少するのかもしれない。(4)男性はオンライン・コミュニティに参加することで、多様な男性の社会ネットワークを拡大し、社会参加が促進されるが、女性のネットワークの多様性は拡大しない。また、女性がオンライン・コミュニティに参加しても男女どちらのネットワークの多様性も拡大しない。(5)もともとインターネットの結束機能を期待している人々がオンライン・コミュニティに積極的に参加している。したがって、携帯メール利用者とPCメール利用者、男性利用者と女性利用者では、インターネットを用いることで社会関係資本に格差が生じる可能性も示唆された。なお、上記の結果を詳細に検討するために、パネル調査の第3回目を実施した。すなわち、第1回(平成14年11月)に回答した1002名の山梨県民に平成17年3月に郵送調査を行い、現在分析中である。
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