研究課題
基盤研究(B)
インターネットが社会関係資本に及ぼす影響についての因果分析するために、3回のパネル調査を行った。第1回は2002年11月に、山梨県の選挙人名簿から層化二段無作為抽出法で選んだ1320名に留め置き法で、第2回は第1回調査に回答した1002名を対象に2004年3月に個別面接聴取法で、第3回調査は、2005年3月に郵送法で調査をした。有効回答率は、第1回75.9%、第2回64.5%、第3回43.1%であった。時系列データは、次の3点に分けて分析した。1.インターネット利用変化2.インターネット利用が社会関係資本(ソーシャル・ネットワーク、信頼、互酬性)を補完する効果(1)携帯メール利用はサポートを提供してくれるような強い紐帯を、PCメール利用は多種多様な人々との弱い紐帯を増大させる。(2)携帯メールの利用はインフォーマルな社会参加を、PCメールの利用ほフォーマルな社会参加や争点参加を促進していた。したがって、PCメールの利用によって広く開かれた中間集団への能動的社会参加という(橋渡し型)社会関係資本の増大が期待されるが、携帯メールは私的でインフォーマルな社会的文脈で生起しているためにそのような効果は見られなかった。3.インターネット利用が社会関係資本を媒介して市民参加、社会的寛容に及ぼす影響(1)PCメールの利用は非寛容を減らす傾向があるのに対して携帯メールは増加させる傾向がある。これは、携帯メールによるコミュニケーションが強い紐帯を介したものに偏っているために、「内輪」で固まり、異質な他者への寛容性が減少するのかもしれない。(2)男性はオンライン・コミュニティば参加することで、多様な男性の社会ネットワークを拡大し、社会参加が促進されるが、女性のネットワークの多様性は拡大しない。また、女性がオンライン・コミュニティに参加しても男女どちらのネットワークの多様性も拡大しない。(3)もともとインターネットの結束機能を期待している人々がオンライン・コミュニティに積極的に参加している。したがって、携帯メール利用者とPCメール利用者、男性利用者と女性利用者では、インタニネットを用いることで社会関係資本に格差が生じる可能性も示唆された。
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