研究概要 |
テストレットとは,複数の小問で構成されている大問のことである.我が国の公的試験では,多くの場合複数のテストレットでテストが構成されている.標準化をする際,項目反応理論は非常に有効な理論であるが、局所独立の仮定を満たす必要があるとされる.局所独立の仮定とは,小問題の内容が関連すればするほど,それを満たさない危険性が増すとされる.一方,IRTにおいてテストレットに対応するモデルがあり,段階反応モデル,一般化部分的採点モデル,連続反応モデルなどが有望視されている.これらのモデルでは,テストレット間の局所独立性が保たれていれば良い. 本年度,我々は,センター試験の本試験と追試験の両方を受ける「モニター調査」を実施して,主にセンター試験「数学I・数学A」「数学II・数学B」に着目して標準化の研究を行った.ここでいう「標準化」とは,「個々のテストに絶対評価の可能性を導入する(いわゆる標準化)」と「個々のテストを相互に比較可能にする(等化)」の両方を視野に入れている. 具体的には,モニター調査において,数学Z試験というテストを実施して,テストの標準化・等化を試みた.数学Z試験は,平成15年度の追試験から構成されている.一方,モニター調査の被験者は,平成16年度のセンター試験における本試験と追試験を回答している.よって,数学Z試験を手がかりにして,平成15年度と平成16年度の「数学I・数学A」および「数学II・数学B」の標準化・等化が達成された.なお,テストレットモデルとしては,連続反応モデルが採用された.これらの研究は,吉村・石塚・大津・林・内田・椎名・中畝・荘島(2004)による「平成16年度大学入試センター試験モニター調査研究報告」における「第5章年度間共通問題を用いた平成15,16年の「数学I・数学A」「数学II・数学B」の等化の試み」で詳しく報告された.
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