研究の成果は以下の3点にまとめられる。 1.診断テスト作成 小学1年から中学2年までの算数・数学の教科書すべての単元・分野から問題を抽出し、下位問題533問からなる、学力達成度診断のためのテストを作成した。 2.テスト実施の結果 「ことばの教室」に通級する重度の難聴中学生3名(男子1年生1名、女子2年生2名)を対象に、上記のテストを実施した結果、 (1)小学校中学年の課題で70%前後、5年の問題で30%未満、6年から中学2年の問題までは50%前後の達成率で、5年生の問題だけが特に落ち込んでいた。小学校時代には出来ていたという家族の話から、学年進行につれて学力の剥落が起こっていることが窺われた。 (2)数量関係と図形の領域において特に顕著であった。全体を通して割合や比率、立体に関する問題、文章題や方程式の文章の読み取りなど、抽象的-言語的思考を要求する問題で特に困難が見られた。 3.改善の可能性 少数や分数の問題で苦手領域を克服するための指導を試行的に実施した。その結果、1時間程度の個別指導で正しく解答できるようになり、改善の可能性が確認できた。直観的な形で問題を提示することが有効だったことから、教育プログラムの開発の可能性が期待できる。 これら学力の剥落現象、誤りの内容が、難聴児特有の問題なのか、健常児のデータと比較することが今後の課題として残された。
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