今年度の研究成果を、当初の研究計画との関連で以下に述べる。 1.研究計画1)と2):二種の下位検査からなる神経心理学的運動発達検査を、小学校1・2年生に実施した。健常児で概ね遂行できたが、数%の割合で各学年に遂行できない児童が見られ、国語の成績との若干の関連性がみられた。言語発達に問題がある児童の診断テストとしての有効性が期待される。 2.また、手のキネチックな運動の評価は主観的評価に依存せざるを得なかったが、ビデオ映像の動作解析ソフトを利用することによって、客観的に評価することができた。大学生と幼児・児童の比較から、見た目で評価する方法に比べ、より正確に運動反応の時間的変化の過程を分析できた。また、運動学習の転移の経過がよくわかり、個人の遂行過程が詳細に分析できた。 3.研究計画3)と4):文章の読みの活動の学習水準を診断するために、アイカメラによる読みの活動のパターンの客観的に分析を試みた。読み活動の客観的指標として活用できる見通しがついた。聴覚障害児で算数問題の解決時の読みを解析した結果、読みや記憶そのものには問題がなかった。算数課題の内容の理解ができず、数概念や数学的思考の発達の遅れが明らかになった。 4.研究計画4):小学1年から中学2年までの算数・数学の下位問題533問からなる、学力達成度診断のためのテストを作成した。難聴中学生に実施した結果、小学校中学年の課題で特に落ち込んでおり、学年進行につれて学力の剥落が起こっていることが窺われた。抽象的一言語的思考を要求する問題で特に困難が見られた。個別指導で改善の可能性が確認できた。
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