研究概要 |
はじめに,これまで諸外国において有効性が実証されてきたパニック障害に対する治療法を構成する要因を文献展望によって明らかにすることによって,パニック障害の治療に有効な治療パッケージを構成する治療技法が明らかにされた.次いで,DSM-IVにしたがって広場恐怖を伴うパニック障害と診断された患者男女15名を対象として,(1)パニック障害に関する心理教育,(2)パニック障害の治療法に関する心理教育,(3)しばしばパニック発作のトリガーとなっている身体反応緩和のための呼吸調整法とリラクセーション,(4)回避行動消去のためのエクスポージャー,(5)認知の修正のための認知的再体制化法,(6)再発予防のための不安管理訓練から構成される認知行動療法プログラムを実施し,心理的測度,行動的測度を指標としてその効果を検討した.その結果,平均治療セッション数7.7回,平均治療期間6.3か月で著名な症状の改善を得た. そこで,これらの患者に対して実施された認知行動療法プログラムを構成する要素をまとめ,合計10セッションからなる標準的プログラムを作成した.そして,DSM-IVにしたがって広場恐怖を伴うパニック障害と診断された患者男女14名を対象として,薬物療法を実施することなく標準的認知行動療法プログラムを実施した.その結果,先と同様に著名な症状の改善を得ることができた. 以上の結果にもとづいて,パニック障害に対する認知行動療法の効果のメカニズムに関する考察が行われた.なお,現在,治療効果の検討を,認知行動療法を実施することのない薬物療法群と比較検討のための研究を継続実施中である.
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