形態知覚の脳内機序に関する非侵襲的研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15330155
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 江島 義道 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (60026143)
• 研究分担者: 高橋 成子 京都市立芸術大学, 美術学部, 助教授 (90216721) ; 山本 洋紀 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助手 (10332727)
• キーワード: 形体知覚 / 脳イメージング / 視覚領野 / fMRI / VEP / 知覚的マスキング / 視野表象 / 対称性

研究概要

本研究の目的は、ヒトの形態知覚過程の神経機構を脳イメージング法によって解明することである。本年度は、2次元静止図形を対象として脳活動を解析した。
1)機能的磁気共鳴装置(fMRI)による、視覚領野での形態知覚関連脳活動の測定。
fMRIを用い、逆行メタコントラストマスキング(隣接刺激の直後呈示によるターゲット視認性低下現象)に伴う大脳視覚野の活動を測定した。その結果、第1次、第2次、および第3次視覚野において、マスキング効果による脳活動の減少がみられた。脳活動の減少は、第1次視覚野よりも、第2次、第3次視覚野で大きい。結果は、視覚野の階層性において、初期視覚野の視対象表象が抑制されて知覚的マスキングが起こることを示唆する。
低次視覚野の四分視野表象のため、刺激の脳内表象は呈示位置により劇的に変化するが、形態知覚は呈示位置に依存しない。形態知覚過程と視野表象との関係を調べるため、完全円、半円、四分円を刺激としてfMRIによる脳活動を測定した。皮質領域の刺激偏心度表象に関わらず、応答信号強度は、完全円>半円>四分円の順であった。結果は、視野情報統合から形態知覚に至るプロセスでの低次視覚野の重要性、高次視覚野-低次視覚野間のフィードバックループの介在を示唆する。
2)誘発電位計(VEP)による、形態知覚に相関する時間特性の解析。
対称性・図形性要因について、Gaborパッチを要素とする円とその変形パターンを用い、視覚誘発電位を測定した。片側分割図形を先行呈示し、その応答完了後に、もう片側を呈示してVEPを計測した。結果、パターンの知覚時に、VEP波形に陽性方向に大きな山が見られた。この山は、閉合図形・完結図形ではnarrowで、それ以外ではbroadとなった。また、非対称図形に比べ、対称図形でnarrowであった。学習効果によって、山のピーク潜時が早くなった。結果から、形態知覚では対称性が重要な要素であることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Y.Ejima, S.Takahashi, H.Yamamoto, M.Fukunaga, C.Tanaka, T.Ebisu, M.Umeda: "Interindividual and interspecies variations of extrastriate visual cortex"Neuro Report. 14・12. 1579-1583 (2003)
• [文献書誌] G.J.van Tonder, Y.Ejima: "Computation of Shape Symmetries within the maximal Disk Paradigm"IEEE Transaction on Systems, Man, and Cybernetics-Part B : Cybernetics. 33・3. 535-541 (2003)
• [文献書誌] ハルト・バン・トンダー, マイケル・ライオンズ, 江島義道: "龍安寺の石庭を科学する。"電子情報通信学会誌. 86・10. 742-746 (2003)
• [文献書誌] 前田青広, 福永雅喜, 山本洋紀, 田中忠蔵, 恵飛須俊彦, 梅田雅宏, 江島義道: "Cornsweet錯視事態におけるヒト視覚野の活動-fMRI研究"電子情報通信学会技術研究報告. HIP2002-58. 25-29 (2003)
• [文献書誌] 前田, 福永, 中越, 山本洋紀, 山本謙一郎, 田中, 恵飛須, 梅田, 江島: "輪郭錯視事態におけるヒト視覚野の活動-fMRI研究"電子情報通信学会技術研究報告. HIP2003-05. 13-18 (2003)
• [文献書誌] 番浩志, 福永, 中越, 山本, 松野, 田中, 恵飛須, 梅田, 江島: "脳イメージングによるヒト視覚野のレチノトピー構造と形態の全一性との関係解析"電子情報通信学会技術研究報告. (印刷中). (2004)
• [文献書誌] 前田, 福永, 中越, 山本, 松野, 田中, 恵飛須, 梅田, 江島: "メタコントラスト事態におけるヒト視覚野の活動-fMRI研究"電子情報通信学会技術研究報告. MBE2003-05. 35-40 (2003)
• [文献書誌] 山本哲也, 山本洋紀, 江島義道: "両眼立体視が幾何学的錯視に及ぼす影響"電子情報通信学会技術研究報告. (印刷中). (2004)