研究概要 |
最終年度となる平成17年度の研究は,1)熟達歌手におけるフラット・シャープシンギング事例と,2)学習者のフラット化の治療の2点中心に研究と実践をおこなった。具体的にはハンス・ホッターのフラット,フィッシャー・ディスカウのシャープシンギングの歌唱を分析した。この分析では,CSL4400を用いて研究者による測定と新しく購入したMelodyne2.6による自動測定の結果を比較した。一方,治療法の研究では,Protoolsにautotuneをアドインしたシステムを用いて,被験者のフラット化した部分を矯正し,この矯正した歌唱をターゲットモデルとする,というアクションリサーチをおこなった。これは非常に効果的な方法であり,国内,国外での学会発表,講演では非常に注目され,大きな反響をおこした。また,フラットシンギングの著しい声楽専攻の大学院生にはMelodyneによる視聴覚フィードバックをおこなった。演奏曲目すべてをMelodyneでピッチ分析し,どういう条件のもとでフラット化が生じるか,その原因について視覚的分析をもとに追跡しながら,矯正モデルをつくっていったのである。この研究を通じて視覚フィードバックによる歌唱教育が調子外れのレベルから専門教育においても有効であることが明らかになった。 今年学会研究発表おこなったのは,音楽表現学会静岡大会(村尾),音楽教育学会沖縄大会(新山王政和,村尾,小川),音楽教育学会妙高セミナー(村尾),APSMER2006シアトル大会(村尾,小川)である。この他,上海音楽院と中国音楽院で今回の一連の研究についての講演をおこなった。これらの研究発表をもとに科学研究費による成果報告書を作成した。
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